2月10日 あらあらしき息す
2006年 02月 10日
(おじかのまえわれもあらあらしきいきす)
橋本多佳子。
多佳子といえば女ごころを打ち出したとよく言われるが、はたしてそうだろうか。
「雪はげし抱かれて息のつまりしこと」「夫恋へば吾に死ねよと青葉木蒄(あおばずく)」などの句が有名だが、この作者の作品としては「仏母たりとも女人は悲し灌仏会」「雀の巣かの紅絲をまじへをらむ」などのほうが、抑制された気持ちが俳句の中に生きている。
俳句の世界で鹿と言えば、秋の季語である。この句の場合も、鹿の交尾期、九月、一〇月ごろに牡鹿が高く長い声で鳴いたのを詠んだものかもしれないが、もっと象徴的な季語としてある。句集『紅絲』の「鹿」という一連には「二月尽林中に鹿も吾も腰折り」などという作も見られる。
掲出句は女性の情念のあらわれと読めばよい。原初的な荒々しいものに対する憧れの表現である。by癒しの一句。
★鳴き声が収録してありますよ☞ 「奈良の鹿の生態」
「情念の俳句詠み切る美女ありき」
(じょうねんの はいくよみきる びじょありき)
山根尽生。
「ゆめ二つ全く違う蕗のたう」
赤尾兜子(とうし)。