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by jinsei1

3月6日 啓蟄

「啓蟄の銀座の地下の房に逢ふ」
(けいちつの ぎんざのちかの ぼうにあふ)
高橋睦郎。
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 古い言葉で「仲春の月、蟄虫みな動き、戸を啓き始めて出づ」という。これが啓蟄という中国の暦で二十四節気の一つで、陽暦の三月六日ごろにあたる。蟄虫とは、土中に隠れて冬ごもりしている種々の虫のことをいう。春になって、蟻・地虫・蛇・蜥蜴・蛙などが地上に這い出してくる。「蛇穴を出づ」「地虫穴を出づ」などと諧謔味のあるきごにもなっている。
 掲出句はそういう俳意をふまえて、人間界をやや皮肉に観じた作品である。房は小部屋の意味だが、この場合は茶房か、酒房か。銀座の地下の酒場で出逢うお互いがまるで土中の蛇か地虫ように感じられて、おもしろい。地下の小部屋にも春は確実にやってきているということだろう。すこし体がむずむずする感じ。句集『賚(たまもの)』所収。句集ではこの句の次に「啓蟄の今日出でありく足の数」という作がならんでいる。これも人間界のことをいいながら、まるで忙しく出歩く人間がたくさんの足を持った一匹の地虫であるかのような感覚を誘う。作者は現代詩人にして、俳諧をよくする。癒しの一句。

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「人もまた光求めて穴を出で」
(ひともまた ひかりもとめて あなをいで)
山根尽生。

明日3月7日の一句
「春の家裏から押せば倒れけり」 
和田悟朗。

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by jinsei1 | 2006-03-06 10:53 | 癒しの一句