7月11日 臭い商法
2006年 07月 11日
昔々、上野は、不忍池の弁天さまが、久し振りのお開帳ということになりました。
さあ、有名な弁天さまのこと。
お堂のある小さな島は、朝早くから日の暮れまで、大変な賑わい。
飴屋に、団子屋、玩具屋など、小さな出店の客を呼ぶ声に、チンチンチンと器用に子供の名前を彫り上げる、迷子の札売りまで、そして、一際騒がしいのは、四六の蝦蟇の油売りに、古着屋の叩き売りに、松井源水の独楽回し。
出店から少し離れた所には、茶屋も、ずらりと並んでいます。
ところが、この島は弁天さまの島ですので、やたらに小便ができません。
これが誠に不便で、取り分け女の人は、困り果ててしもうた。
これを見て、頭の良い男が、茶店の裏を借りて、貸し便所をつくった。
一人が使うたんびに、五文(百五十円ほど)ずつ取るので、大変な儲けです。
太郎作は、客の絶えない便所を見て、
「なるほど。こいつあ、上手い思い付きだ」
すっかり感心して、
「よし。おれも便所を作って、一儲けしよう」
と、さっそく家に帰って、女房に相談すると、
「一軒出来た後だもの。今更立てた所で、流行りっこないよ」
と、反対します。
「なあに、そんなことがあるもんか」
と、太郎作は、女房を無理やり説き伏せて、今ある便所のすぐ隣に、新しいやつを建てました。
ところが、太郎作の便所は、建てたその時から、大繁盛。
お客がずらりと並んで、順番を待たねばならないと言う有り様。
それに比べて、初めからある隣の便所ヘは、入る者が一人もいません。
夕方になると、太郎作夫婦は、重い銭箱を担いで、家に帰って来た。
「どうだい、女房。やっぱり、おれの言った通りだろう」
と、太郎作は、鼻高々です。
女房は、いかにも不思議そうに、
「それにしても、どうしてまあ、うちの方ばっかりに、人が来るんでしょうねえ?」
と、尋ねれば、太郎作は、澄ました顔で、
「実はな。ちっと、頭を使った」
「あれ、お前さんがかい?」
「そんなに、不思議がることはない。
なに、隣の便所には、
おれが一日中、入っていたんだ」
おしまい
ハイッ、お次ぎがヨロシイようで------。
明日7月12日の予告
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