9月18日 拾い屋
2006年 09月 18日
あるところに、貧乏長屋がありました。
その長屋に、あるとき茂作という男が越して来ました。
ところがこの男、一体何をして暮らしているのやら、毎朝早く出掛けては、日の暮に帰って来ますが、商売道具ひとつ持って行きません。
不思議でならない家主の親父が、あるとき聞いて見ました。
「おらの商売か? おらの商売は、拾い屋だ」
「拾い屋? はて、それはどういうことだ」
「なあに、毎日町ん中歩いて回れば、何かひとつは拾うて帰れるもんだ、おら、それで暮らしてるんだ」
「・・・・・・?」
親父はどうにも合点がいかない様子。
(ようし、それならひとつ)
と、親父は次の朝早く、茂作の後をそっと着けて行きました。
そんなこととは露知らず、茂作は通りを真っ直ぐ歩いていきます。
町の中ほどをすぎても相変わらず、てくてく歩いていくばかり。
やがて神社の境内を通り、隣の町までやって来ましたが、何一つ拾う様子はありません。
こんな調子で町という町を全部回るうちに、夕方になりました。
茂作も諦めたか、やっと家に戻る様子、お蔭で親父も草臥れ果てて戻って来ましたが、ハッと気が付くと、どうやらふ懐の銭二百を落としていました。
「あいつのせいで、録な事はねえ」
と、独言を言っていると、そこヘ茂作が帰って来ました。
(腹は立てども文句を言う訳には行かんわい)
親父はしらばっくれて、言いました。
「今日はええ日和で人も多かったろうし、さぞええ物を拾ったろう」
「それが親父どん、今日はいつになく不景気じゃった。けれども、帰りがけに、
そこの路地で銭二百を拾うたんで、
まあ、一日歩いた甲斐はありました」
おしまい
ハイッ、お次ぎがヨロシイようで------。
明日9月19日の予告
馬の糞が三つ
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