日日光進・更新・交信。アナタへの健康波動---。


by jinsei1

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「身にしみて人には告げぬ恩一つ」
(みにしみて ひとにはつげぬ おんひとつ)
富安風生。 
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性空上人像

 染色の液にひたって色がつくのが「染む、沁む、入む」の意だ。色が染みるように、身に深く感じることを<身にしみて>という。俳句では冷気を即物的、感覚的に受け取る傾向があり、季節としては「冷(すさま)じ」に近い。気分はそれほどに容易ならざるもので、人に軽々しく告げられない恩があるという。ことばでは言い尽くせない深いめぐみで、その一つのために節を全うしようという思いを詠む。byけさの一句抄。

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「改めて如来大悲の恩徳を」
(あらためて にょらいだいひの おんどくを)
山根尽生。

性空上人出水伝説と、さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-31 18:57 | けさの一句

10月30日 石仏

「憩ひたき石は石仏草の花」
(いこひたき いしはせきぷつ くさのはな)
関口祥子。
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 石仏もいろいろで、岸壁に刻んだり石窟に彫ったものもある。掲出句は野に忘れられたようにある石仏だろう。藤田湘子には「どこからか婆来て座る春の石」、正岡子規には「絶えず人いこふ夏野の石一つ」という句がある。文字通り座って憩える石であった。休息するのに好都合と見つけたのは石仏だったというのだろうか。少々落胆した心持ちを慰めるかに可憐な秋草の花が咲いていた。byけさの一句抄。

広沢池
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「お揃いで湖面を守るや石仏」
(おそろいで こめんをまもるや いしぼとけ)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-30 13:52 | けさの一句

10月29日 白眉


「眉に白きを交へて夜を秋といふ」
(まゆにしろきを かえてよるを あきといふ)
大野林火。
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 中国古代人の世界観の一つ五行説では、四季を青春、朱夏、白秋、幻冬の異称でよんだ。白は秋にあてられ、芭蕉は「石山のいしより白しあきの風」と詠んだ。長い歴史の中で、白は秋のイメージとして定着していったのではなかろうか。掲出句においては、人生の秋という思いが強い。夜長に考えることはしみじみと懐かしいものばかり。眉に白毛を交えてとなると老境である。象徴的にいえば、これが秋の夜だ。byけさの一句抄

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「秋の夜や馬良白眉の三国志」
(あきのよや ばりょうはくびの さんごくし)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-29 08:37 | けさの一句

10月28日 帰着


「外国の船が港へ秋の薔薇」
(とつくにの ふねがみなとへ あきのばら)
谷口摩耶。
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 異国情緒を味わえるのが港である。歴史的にいえば幕末における開国によって、横浜、長崎、函館の三港で自由貿易を開始。掲出句は現在の景であるが、懐かしいイメージあっての<外国の船>であろう。また薔薇も開国以後に輸入された、いわゆる西洋バラが港の風景によく似合う。けれど往時のきらびやかさはない。薔薇は初夏が最盛期で、秋にも咲くが、花も小さく色合いも劣る。byけさの一句。

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「ツマグロや羽を窄めて着艦す」
(つまぐろや はねをすぼめて ちゃっかんす)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-28 13:12 | けさの一句

10月27日 木曽


「吹く風も澄む水音も木曽に入る」
(ふくかぜも すむみずおとも きそにいる)
高橋悦男。
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 長野県の南西部、木曽川上流の渓谷一帯を総称して木曽谷とよぶ。耕地は全面積の二パーセントにすぎないから、すべて山地であるといってよもよかろう。日本最大の檜林が広がり、風が樹木の香気を快く伝えてくれる。また寝覚ノ床に代表されるような清流が美しい。木曽に踏み入ったとき気分も引きしまるものがあったのだろう。「水澄む」は秋の季語だが、視覚だけでなく全身で木曽の秋を感じての作。byけさの一句抄。

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「伊那谷や鉢の子いなござざ虫と」
(いなだにや はちのこいなご ざざむしと)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-27 06:57 | けさの一句

10月26日 飛騨の国


「飛騨の国をうつろとなして霧湧けり」
(ひだのくにを うつろとなして きりわけり)
水原秋桜子。
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 岐阜県の北部を占める旧国名が飛騨である。山岳高原地域で、特に名高いのは乗鞍岳だ。平安時代から山岳信仰の対象として崇められてきた。晴れて見晴らしのよいときは遥拝することも出来るが、高所の天気は変わりやすい。<霧湧けり>は文字通り実感であり、そのせいで急に視界は失われ精神的な支柱をなくしたむなしさを詠む。それを個人の心でなく、壮大な風景句となしたところが特色だろう。byけさの一句抄

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「霞む灯や湯煙夜霧飛騨の宿」
(かすむひや ゆけむりよぎり ひだのやど)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-26 07:07 | けさの一句

10月25日 秋天

「秋天や心のかげを如何せん」
(しゅうてんや こころのかげを いかにせん)
鈴木花蓑。
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 さわやかに澄んだ空が秋天である。けれど「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」と、定めないものの比喩に使われるのも秋の空だ。心は単に独立した存在ではなく、周囲の環境から影響を受け思いを喚起することも多い。空があまりに美しすぎて、かえって<心のかげ>を意識するというのも人間に有りがちな現象ではなかろうか。それを受け入れ、どうしょうもない、と達観したところが掲句のさわやかさにもなっている。byけさの一句抄。

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「秋天を逆しま宿す湖面かな」
(しゅうてんを さかしまやどす こめんかな)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-25 06:48 | けさの一句

10月24日 秋祭り

「村童子笛吹く童子秋祭り」
(そんどうじ ふえふくどうじ あきまつり)
越村蔵。
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 秋の収穫感謝祭を、一般的には秋祭りとよぶ。「とんどんひゃらら どんひゃらら」とは唱歌でなじみの一節であり、村童子には心の浮き立つメロディーであった。一九五〇年代の村童子に忘れられないのは「ひゃらりひゃらりこ」ではじまる『笛吹童子』のラジオドラマだろう。途中で遊びをやめて家へ放送を聞きに帰ったほどの人気番組。そんな心の躍動を一時代の心象風景として軽やかに詠む。byけさの一句抄。

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「女の子らも祭りの笛の下調」
(めのこらも まつりのふえの したしらべ)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-24 07:51 | けさの一句
「鳥渡る国境の無き丘の墓地」
(とりわたる こっきょうのなき おかのぼち)
古賀まり子。
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 前書に「英連邦戦死者墓地」と記す。横浜市にある四つの外国人墓地の一つで保土ヶ谷にある。イギリス・インド・カナダ・オーストラリアなど英連邦戦死者二八七三名が葬られている墓地だ。太平洋戦争での捕虜を日本に連行し、炭鉱などで強制的働かせた。死後は無念にも異国に眠ることとなり<国境の無き>と表現するが、折しも鳥渡る光景に感慨をこめて詠む。 「身にしみぬ父母の名添へし兵の墓碑」の句も。byけさの一句抄

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「成る程と思いはすれどさりながら」
(なるほどと おもいはすれど さりながら)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-23 10:08 | けさの一句

10月22日 柿色


「柿色の日本の日暮柿食へば」
(かきいろの にほんのひぐれ かきくへば)
加藤楸邨。
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 柿が赤く色づくと、鳥が飛んできて実をついばむ。鳥は色に敏感なのである。芭蕉は「里古りて柿の木持たぬ家もなし」と詠む。それほどに柿は日本の風土に適し、津々浦々に秋を彩る風物詩であった。その柿だけでなく、日本の日暮れ全体が柿色だとするのは興趣ぶかい。それは柿を食いながらの感懐であり、一種のノスタルジーを詠んだ一句だ。柿色とは渋柿の赤茶色、いかにも郷愁を呼び起こす色である。byけさの一句抄

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「極まれり合格祈願次郎柿」
(きわまれり ごうかくきがん じろうがき)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-10-22 06:37 | けさの一句