日日光進・更新・交信。アナタへの健康波動---。


by jinsei1

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11月30日 琥珀

「茨の実琥珀十一月終る」
(いばらのみ こはくじゅういち がつおわる)
山口青邨。
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 琥珀は松やになどの樹脂が埋没して地中で化石となったもの。五二〇万年から一六四万年前までさかのぼるが、そんな太古から<茨の実>も古生物として存在していた。作者は東大教授など歴任した鉱物学の大家。実際に見たのはノイバラだろうが、それによって化石の琥珀を連想するのは常人の思い及ぶところではない。中七までは悠久の時空に遊び、下五で収穫を終えた十一月末日の現在を詠む。byけさの一句抄。

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「琥珀色何ぞ祈るや腕念珠」
(こはくいろ なんぞいのるや うでねんじゅ)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-30 15:32 | けさの一句

11月29日 紅葉


「ことごとく紅葉散り終へ里に冬」
(ことこととく もみじちりおへ さとにふゆ)
高木晴子。
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 時の推移を見事に写生し、静寂な景が浮かび上がる一句だ。<ことごとく>というからには少々の紅葉ではなかったろう。「紅葉かつ散る」の季語もあるが、すっかり散りつくした山里には墨絵のような枯淡の趣が増してゆく。父虚子のひざもとで、俳句的雰囲気の中に育った人だ。日常生活がすなわち俳句的な一面もあり、率直に詠んだ特色がある。「余生とはかく美しき冬紅葉」と忌憚なく自然と共に生きて楽しんだ。byけさの一句抄。

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「散り際を風にそよがる紅葉かな」
(ちりぎわを かぜにそよがる もみじかな)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-29 14:48 | けさの一句

11月28日 ちゃの花


「ちやの花のからびにも似よわが心」
(ちゃのはなの からびにもによ わがこころ)
松岡青羅。
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 風流に生きた江戸中期の俳人である。江戸づめ姫路藩士だったが、身持ちが悪く藩を追われて以後は諸国を遍歴。「秋風に白蝶果を狂ひけり」などの境涯性の濃い句を特色とした。枯淡味も好み、茶の花に心ひかれる一面も。<からび>は「わび」「さび」にも通じる閑寂な趣の意。茶木はツバキ科で、ツバキ、サザンカと同類ながら、それほどの華やかさはない。その花の相が好きで、心を寄せたのである。byけさの一句抄。

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「ちゃの花に託す風流わが心」
(ちゃのはなに たくすふうりゅう わがこころ)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-28 14:56 | けさの一句

11月27日 若き風

「マラソンの若き風過ぐ枇杷の花」
(まらそんの わかきかぜすぐ びわのはな)
小島千架子。
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 近年はマラソンばやりで、年がら年中どこかで大会が行われている。そのうち四割近くは十一月に開かれているという。ちょうど枇杷の花の咲くころだ。枯れ葉となり落葉の時期だが、枇杷は緑を失わず枝先に円すい花序をなして、白色五弁の花を密につけ芳香を放つ。沿道に咲く枇杷もあり、傍らを走り抜けてゆくのは若きランナーたちだ。つらいトレーニングを経て、肩で風切る晴れの日である。byけさの一句抄。

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「寒風や甘く芳し枇杷の花」
(さむかぜや あまくかんばし びわのはな)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-27 17:23 | けさの一句
 
「志と詞と死と日向ぼこりの中なるや」
(しとしとしと ひなたぼこりの なかなるや)
折笠美秋。

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 春のように暖かい初冬のころの、晴天の日を小春日和という。そんな日には戸外で命の洗濯をするのもよい。<日向ぼこり>である。閑居老人の暇つぶしの場合もあるが、掲句の作者は<志と詞と死と>がこんがらかっているのだ。「俳句思う以外はかわれすでに」とも詠む。新聞記者だったが治療不能の難病にかかり七年余の闘病の果平成二年に五十五歳で死去。死の床に横たわっての、極北の俳句であった。byけさの一句抄

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「たまちゃんも日向好きよと言うたニャン」
(たまちゃんも ひなたすきよと いうたにゃん)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-26 18:19 | けさの一句

11月25日 三島忌


「懐手して説くなかれ三島の死」
(ふところで してとくなかれ みしまのし) 
波多野爽波。
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 和服の袂の中や胸元に両手を突っ込んだ、ふてぶてしい態度が<懐手>の意。十一月二十五日は三島忌。各方面に多彩な才能を発揮した作家だったが一九七〇に割腹自殺している。戦後の民主社会へのアンチテーゼとしてナショナリズム賭けたが、その是非をめぐって多くの人によって議論された。その批評態度に苦言を呈しているのだ。作者は元宮内大臣の波多野敬直の孫、学習院の二級後輩が三島だった。byけさの一句抄。

※こんな三島論が☞ 三島由紀夫

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「懐手思案投げ首特措法」
(ふところで しあんなげくび とくそほう)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-25 13:55 | けさの一句

11月24日 トラジ


「酒癖のあとのトラジよ燗熱し」
(さけぐせの あとのとらじよ かんあつし)
石原八束。
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 朝鮮の代表的な民謡が<トラジ>。食用や薬用の白いトラジ(ききょう)の根を掘る姿や恋愛を夢みる山里の少女の純情を歌っている。酒に酔うと決まって「トラジ」を歌う男がいた。彼を追懐し、哀悼の意を表す一句である。中七の<トラジよ>で切れ、座五は自信のことだ。熱燗で飲んでいる内に自分も酔ってしまったというのだ。「エイヘイヨエイヘイヨときこゆ秋」の作も。byけさの一句。

※トラジ
 トラジ トラジ トラジ
 可愛いトラジの花咲いてる
 峠を越えて行く道 幼なじみの道だよ
 エイヘイヤ エイヘイヤ エイヘイヤ

 トラジ トラジ トラジ
 白いトラジの花見つめて
 母を偲ぶ黄昏 星はやさしく揺れるよ
 エイヘイヤ エイヘイヤ エイヘイヤ

 トラジ トラジ トラジ
 髪にトラジの花飾れば
 過ぎた昔懐かし 夢もほのかに浮かぶよ
 エイヘイヤ エイヘイヤ エイヘイヤ
  (朝鮮民謡 訳詞:藤村閑夫)


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「白い花漢方薬と阿片とも」
(しろいはな かんぽうやくと あへんとも)
山根尽生。
※ペクトラジ(白桔梗):北朝鮮ではアヘンの隠語。
by jinsei1 | 2007-11-24 10:52 | けさの一句

11月23日 焼藷


「知らぬ子もゐて焼藷の火の手かな」
(しらぬこも ゐてやきいもの ひのてかな)
千葉信子。
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 わらべ歌「たき火だ たき火だ おちばたき」と口ずさんでしまいそうな雰囲気をかもす一句だ。たき火には要領があって、ましてさつま藷をうまく焼くには手間がかかる。子供にとっては無類の楽しみで、遊びで成長するところがあった。<焼藷>を媒介に輪が広がってゆく。時には危険な<火の手>もあがるが、それをよそ目に子供を育てた親たちがいた。今や過保護で次代の子供はどう育つか。byけさの一句抄

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「目一杯初めての味ホクホクと」
(めいっぱい はじめてのあじ ほくほくと)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-23 11:49 | けさの一句

11月22日 波の音


「濤うちし音かへりゆく障子かな」
(なみうちし おとかへりゆく しょうじかな)
橋本多佳子。
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 海辺にある和風の家であろう。夏なら障子を取り払って涼しくする。初冬ともなれば、障子を閉めるのが普段の生活だ。冬ごもりというのではない。障子で仕切られた内なる部屋の空間は、幽玄の美をかもし出す。それが西洋建築との大きな相違で、障子を通して伝わる波のうねりは快い。「夜目遠目笠の内」とは女性の容ぼうが実際よりも美しく見えることのたとえ。それとは異なるが、障子は実用だけのものでもない。byけさの一句抄

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「太古のリズムその儘ざばばばば」
(いにしえの りずむそのまま ざばばばば)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-22 14:31 | けさの一句

11月21日 綿虫


「綿虫やそこは屍の出でゆく門」
(わたむしや そこはかばねの いでゆくと)
石田波郷。
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 十一月二十一日は波郷忌。昭和四十四年、宿痾の肺病のため逝去したが、結核療養所にいた昭和二十四年の作。<綿虫>はアブラムシ科の昆虫で、白い綿くずが浮いて飛んでいるように見えるのでこの名がある。<門>は療養所の裏手にあって、病人が死ぬと霊柩車が来て死体を焼き場へと運び出してゆく寂しいところ。入所者は順番を待つように次はだれかと不安にかられながら眺めるのだ。そこに不気味な白い綿虫が飛ぶ。byけさの一句抄。

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「綿虫や飛べば初雪舞うそうな」
(ゆきむしや とべばはつゆき まうそうな)
山根尽生。

さて、明日は
by jinsei1 | 2007-11-21 19:06 | けさの一句