日日光進・更新・交信。アナタへの健康波動---。


by jinsei1

10月29日 両手ひろげ

「捨案山子両手ひろげて生きてをり」
(すてかかし りょうてひろげて いきてをり)
河野南畦(なんけい)。
10月29日 両手ひろげ_a0009666_1126666.jpg
 案山子は稲の取り入れがすむと、たいていは用済みと捨てられる。だが神の依代(よりしろ)だからと、田から庭に移して祭る地方もあるという。そうした神事を言挙げしないまでも、すべてが実利主義である世の中に疑問を呈しているのが掲出句だろう。
 比喩の俳句である。直喩と隠喩、諷諭の三種があるが、いずれにしても新しい意味作用の創造である。既存の言語枠を越えた新しい価値あるものとして自己存在を主張するのだ。掲出句の場合は<捨案山子>に価値を見出して遠まわしにそれとなくさとしている。弱者の側に視座を変えれば、新しい世界が見えるわけだ。
 
1913~1995 東京生まれ。吉田冬葉門。「あざみ」創刊主宰。by村上護。

10月29日 両手ひろげ_a0009666_11252170.jpg
「行く秋や両手ひろげて空抱く」
(ゆくあきや りょ うてひろげて そらいだく)
尽生。

明日10月30日の一句
「行く秋や風白うして象あり」 
北原白秋。

by jinsei1 | 2005-10-29 11:28 | きょうの一句