2月2日 母の
2006年 02月 02日
(きさらぎの はりにきぬいと ははのこゑ)
宇佐美魚目(ぎょもく)
春まだ寒い、いわゆる余寒のころ。しかし日の光はあきらかに冬のさなかとは違って明るい。針に絹糸をとおしている。着物を縫うのである。作者の妻の姿であろうか。そこに母の声を聴きとめた。妻と、自分の母親が二重写しになったような感覚。きさらぎという季語が、その語源の、着重ねる季節という。意味もふくめて重層的にはたらいている。
宇佐美魚目は大正一五年(1926)名古屋市鳴海生まれ。高浜虚子、橋本鶏二に師事、野見山朱鳥(あすか)、波多野爽波に兄事した。掲出句は昭和四九年作、句集『秋収冬蔵』所収。作者は昭和一九年、一八歳で母を亡くしている。二〇代の作に「亡き母に雁の絽の帯ありしこと」がある。by癒しの一句。
(まぼろしの ははのしつけで ぬいどうぐ)
尽生。
明日2月3日の一句
「この永き風邪もつて厄落すべし」
細川加賀。