3月4日 流し雛
2006年 03月 04日
(あかるくて まだつめたくて ながしびな)
森澄雄。
夕方、日が永くなって、まだまだ明るい川べりである。そうはいっても、風も水の流れも、春とは言えまだ冷たい、そういう微妙な季節感をすくいとった作品である。毎年毎年、この川辺に少女が雛を流したことだろう。その少女達の思いにも、作者は気持ちを通わせて、「明るくてまだ冷たくて」と詠んだ。
森澄雄は大正八年(1919)兵庫県生れ長崎育ち。加藤楸邨に師事した。「若狭には仏多くて蒸鰈」「あけぼのや湖の微をとる氷魚網」「この国の桜を見ずや鳥帰る」など旅の間にうまれた佳品が有名である。
掲出句も旅吟であろう。昭和三六年作、句集『花眼(かがん)』by癒しの一句。
(つみとがも みずにながれて ながしびな)
山根尽生。
明日3月5日の一句
「帰るべき山霞みをり帰らむか」
小澤實。
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