2月17日 あわて医者
2006年 03月 17日
さて、ここに、大変あわてもののお医者がおりました。
ある日のこと、旦那が急病なので、急いで来るようにと、呼ばれました。
「それっー!」
と、ばかり、家を出たのですが、あんまりあわてたもんで、脇差しと間違えて、ゴマなどを磨り潰す、擂粉木を腰に差して出掛けました。
無事に、診察をすませて、お屋敷から帰る時でした。
その家の奥さんが脇差しをさし出そうとすると、なんと、それが、擂粉木です。
おかしいのをこらえて、
「ぷぷっ、・・・せっ、先生。どうぞ、お協差を」
と、さし出しました。
医者は、ハッと、気がついて、
「これは、これは」
と、受取り、恥ずかしそうに言いました。
「こうしたことに気を配るのは、妻の役目。帰りましたら、うっかり者の妻を、よく叱っておきましょう」
挨拶もそこそこにして、家ヘすっとんで帰ったのですが、医者は家を間違えて、隣の家ヘ、飛び込んでしまいました。
そして、
「おい、この間抜けめっ!」
縫い物をしている隣の女房の前に、立ちはだかって、どなりました。
「わしに、擂粉木を渡すとは、何事だっ! お陰で、飛んだ恥をかいた。えい、この、不届き者めっ!」
「まあ、隣の先生。一体何のことでございます」
「へっ? あっ! ややっ!」
医者はあわてて自分の家へ入り、今度は自分の女房の前に、ぴたりと両手をついて。
「只今は、飛んだご無礼を申しました。
どうぞ、どうぞ、ご勘弁下さいませー」
おしまい
ハイッ、お次ぎがヨロシイようで------。
明日3月18日の予告
風邪の神送り
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