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by jinsei1

6月10日 留守番眼鏡


6月10日 留守番眼鏡_a0009666_7144681.gif 昔、江戸の神田に、有名なはんこ屋があった。
 そこの親父さんと言うのは、もう年寄で目が悪く、いつも眼鏡をかけて、仕事をしておった。
 ある日のこと。
 一人の客がやって来た。
 はんこを注文して、先にお金を払うと。
「この十日に、きっと取りに来るから、その日にきちんと、渡しておくんなさい」
「はい、承知ました。十日には、必ず、お渡し致します」
 はんこ屋の親父さんは、固く約束して、金を受け取った。
 さて、十日になりました。
 例のお客が、はんこを取りにやって来ました。
 所が、ちょうど親父さんが留守で、息子が一人、店番をしておった。
「先だって注文した、はんこを受取りたい」
と、言うと、息子は、不思議そうに首を傾げて、
「あんたさんは、この辺りの方ではござりませんな。見も知らぬお方に、大事なお客さまの品を、お渡しする事は出来ません」
と、言うので、客はびっくりして、
「先だって、お前さんは、親父殿の側に、ちゃんと座っておったではないか。それを知らぬとは、飛んだ事を言われる」
「そうは申されても、私も、留守を預かる者。見知らぬ方に、大事なはんは、渡されませぬ」
 お客は、すっかり腹を立てて、大きな声で、
「私は、今夜の船で、大阪へ行かねばならん。その前に、取り引きをすませるので、ぜひ、はんが要るのじゃ。それだからこそ、固く約束して、金もちゃんと払って置いたのに」
 金と聞くと、息子は、
(あっ、あの時の客か。)
と、やっと思い出しました。
 でも、今更、謝るのも悔しいので、良い知恵がないかと、暫く考えておったが、
「では、一寸、お待ちなすって」
と、親父さんの仕事机の引き出しから、何時も、親父さんが掛けている眼鏡を取り出しました。
 それを、自分が掛けると、
「私は、あなたさまを見知りませぬが、こうして、親父どのの、眼鏡を掛けて拝見致しますと・・・」
と、お客の顔を、じーっと覗き込んで、





「成るほど。あなたは、確かに、先日おいでのお客様。はい、では、これを」
と、言って、出来上がったはんを、お客の前に差し出しました。

おしまい



ハイッ、お次ぎがヨロシイようで------。
明日6月11日の予告

釜泥棒


寝てる間に、ボケ防止

by jinsei1 | 2006-06-10 07:13 | 一服小話