8月25日 へなへなと、しゃがみ込んで
2006年 08月 25日
「このごろ、西寺の墓地から、幽霊が出るんだってな」
「おお、そうよ。みんな怖がって、近頃では、人っ子一人、通らぬわ」
「全く、迷惑なことだ」
夕涼みの若者が集まって話していますと、中でも強そうな男が、
「よし、俺が行って、出ないようにしてやろう」
と、言います。
「大丈夫か」
みんなで心配しましたが、
「大丈夫、任せておけ」
男は、ポンと胸を叩くと、お酒を一杯引っ掛けて出掛けました。
墓地に着いた男は、大きな墓石の陰で、幽霊の出るのを、今か今かと待っています。
と、噂通り、夜中になると、ヒューッドロドロドロドローと、墓石の下から出て来た幽霊は、ふらふらと墓地の外れの方へ出掛けて行きます。
「今だ!」
男は、用意して来た粘土を懐から取り出すと、幽霊の出た穴に詰めて、踏み固めてしまい、また、墓石の陰に隠れました。
暫くして、幽霊は戻って来ましたが、さて、穴に消えようとしても、穴が詰まっていて入れません。
ヒューッドロドロと、何回やっても消えられず、終いにへなへなと、しゃがみ込んで、
「ああ、私の命も、もうこれっきりだ」
おしまい
ハイッ、お次ぎがヨロシイようで------。
明日8月26日の予告
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